映画感想文

Sickoの感想

この映画は、医療保障がなくなったことによって被害を受けた人たちのエピソードから始まった。
そして、保険に入れない人たちだけでなく、加入している人々にも影響が及んでいることを明確に示していた。
イギリスやフランス、キューバに渡り、国民全体が無料で医療を受けられる現状を示し、最後は
911事件の救助に参加し、
病気を患ったにもかかわらず、十分な医療を受けることがかなわない消防士達の現状を映し出していた。

序盤で印象に残ったシーンは、ある男の人が中指と薬指を切断してしまい、どちらをくっつけるか選択するところ。
莫大なお金がかかるので、どちらもくっつけるという選択は出来ず、薬指を選択します。‘そのほうがロマンティックだろ?’
いやいや、まったくありえない選択ですよ。お金がないなら手術できない、指とくっつける医療があるにもかかわらず
お金がないと手術はやらないよというアメリカの医療は本当にありえないと感じたシーンでした。

次に保険会社の無情さを垣間見ました。まず、ちょっとした記入漏れで保険に入れないようにする、
保険に入っている人で一回手術の許可が下りたにもかかわらず、記入ミスなどでお金は出しませんと判断を覆し、
この病院では保険は適応できませんといって急病患者への支払いを拒否するなど、利益重視で苦しんでいる
人のことなどまったく考えていないものでした。
もし、自分がその人の立場だったらどう思うか一度考えてみたほうがいいと腹が立ちました。
まあ実際、保険会社も企業なわけで、利益を追求することは合理的な行動ではあると思うけれど、
人としてのモラルに反しているのではないか、それはやりすぎているのではないかと思います。
利益を追い求める競争社会においては、資金効率や宣伝、費用削減が重視され、人を思いやったりするモラル
というものがどんどんとなくなってしまうのかなと哀しくなりました。まあ、一般企業においてならまだしも、
医療に関する部門で資本主義が入ってくるのは場違いなんじゃないかなって感じます。

そして、彼がイギリスやフランス、キューバに行き、国民が無料で、薬も一定の価格で提供されるすばらしい医療を見たときに、
私はこっちの医療のほうが絶対にいいなと思いました。しかし、このような完璧に見える医療にもやはり欠点はあり、
高税率の問題だとか、資金削減に病院の倒産や、医師の出国が相次いでいるなどの問題が起きているようです。

国民保険というのは、国がみんなを無条件に助けてくれる制度ではなく、国民全体で費用を出し合って助け合っていく
という制度なのだろうなあと考えます。その中で、医療を無駄に浪費する人、例えば、タクシー代わりに救急車を呼んだり、
ガゼ引いたから救急車を呼んだりする人たちが世の中にたくさんいてはこの制度は崩壊してしまうでしょうし、
そんなことに利用されているくらいなら、やめたほうがましだと反対する人も増えて制度を維持できないだろう。
そうならないためにも、国民全体がこのシステムを理解すること、それと国民のモラルというか節度が絶対に必要となるのではないか。
この二つが国民全体にいきわたれば、国民保険という制度は維持できるのではないかと思います。